
書こうと思った理由
妊娠・出産の認識
私は死産を経験しました。2019年11月の出来事です。多くの方が、妊娠すれば赤ちゃんが元気に産まれてくることを当たり前だと感じていると思います。妊娠中出血などの多少のトラブルがあっても滅多なことは起こらない、最終的には元気に産まれてくるものだ、多分そんな風に思っている方が大半だと思います。男性に至ってはそんなトラブルがあることすら知らずにもっと当たり前に思っている方が多い気もします。もちろん過去や現在につらい経験をしていたり、知識を持っていて妊娠・出産は当たり前ではないと感じている方がたくさんいらっしゃるとも思います。
私は妊娠を機に、出産経験者の友達と話すことが多くなったり、近所の年配の方や見ず知らずの方に話しかけられる機会が多くなりました。『無事に産まれて欲しい』なんて話をすると『大丈夫大丈夫!心配しすぎ』と鼻で笑われたり、中には『絶対大丈夫』と断定的に言われることもありました。そんなやりとりを通して何となく無事な妊娠・出産を当たり前と捉えている人が多くいるのだと感じました。実際心配性な性格の私でも、心のどこかで大丈夫と思っている部分はありました。でも、その思いは無残にも打ち砕かれます…。一人の赤ちゃんがこの世に誕生するという出来事がどんなに奇跡的で、当たり前ではないのかを身をもって知ることになります…。
あまり表に出ない死産
日本での死産の確率は1~2%と言われています。100人に1~2人の割合で死産になるということです。少ないようで多いですよね。数字で見れば多いかもしれない、けれど自分の身に起こるかもしれないと思う程の数字でもない気がします。でも自分の身に起こってしまった…。私は自分が死産を経験するまで死産の確率なんて知らなかったし知るきっかけもなかったですが、実際にはこんなに多くの方がつらい経験をされているのだということを初めて知って驚きました。それと同時に、それにも関わらずあまり話題になったり周りで聞いたりしないな…ということにも気がつきました。デリケートな内容であるので当然といえば当然なのかもしれません。死産を経験された方の中にはそっとしておいてほしい、話したくないという方も大勢いらっしゃると思います。逆にこのつらい思いをわかって欲しい、子どもの存在を認めてほしい…という方も。同じ経験をしたとしても全く同じ気持ちの人なんていないと思うし感じることは人それぞれだと思います。気持ちを秘めておく人も表に出す人も。
現実と向き合う
ぐちゃぐちゃになった気持ちを整理していく中で、私にはどのように前を向いていけばいいのか、立ち直り方を知ることがとても必要でした。ネットでの情報は少なかったのですが、なめるようにはいつくばるように探しました。なにを探していたのか…少しでも自分の気持ちを落ち着かせるものを探していたように思います。共感とはまた違う、現実を受け入られない自分の気持ちを少しでも納得させられるものを。誰とも接触したくなかった当時の私は吐き出すことをしなかったかわりに、色んな情報や記事を自分に落とし込んでいくことで気持ちを整理する作業をしていたのだと思います。私のようにすがる思いでネットを検索している方が今この瞬間にもいらっしゃると思います。喪失感や絶望、人生のどん底に落とされたような私たち家族がどのようにして日常を取り戻していくのか、気持ちの整理をするときの一つとして私の体験談が存在できればと思います。
決して不幸自慢ではなく、前を向くためのツールとして。
そして息子が確かに存在したという証を残すために。
