死産~私のお腹の中で確かに生きた息子の記録⑩

死産~私のお腹の中で確かに生きた息子の記録⑩
入院①初日・検査

夫が会計をすませてくれ、家族3人車に乗り込んだ。静かな車の助手席で「なんで?」という気持ちでいっぱいになり外をボーッと眺めていた。思考を停止しようとする本能と、防げなかったのかという後悔が戦っていた。後悔のほうが勝っていて「ごめんね」と次男に心の中で謝り続けた。

総合病院までは10分程で到着した。連絡は受けているが改めて検査をするということで診察室に入った。当直の先生と新人の若い先生がいた。「お腹の中で赤ちゃんが亡くなってしまったと聞いています。もう一度赤ちゃんがどのような状態か診させていただきますね。」そう説明を受けて検査に入った。この頃になってくると赤ちゃんの全身はエコーに映らないので私はいつも何が映っているのかよく分からない。この時もよく分からなかった。もしかしたら、この病院の方が大きいし機器も特別で、「弱いけれど心臓少し動いていますよ」と微細な心拍を拾ってくれるかもしれないと思いながら検査を受けていた。先生たちは2人でぼそぼそと話している。当直の先生が新人の先生に説明をしているようだ。ぼそぼそが終わって当直の先生が私たちに話しかけてきた。

「先生のおっしゃった通りですね。心臓が止まってしまっていますね。正座をしているような形で、逆子です。」その時最初に思ったことが「長男もよく正座をして遊んでいるな…さすが兄弟だな」だったのは心臓が止まっているという言葉をスルーしたかったからだと思う。目からツーっと涙が流れていた。しっかり拭いてこれからの流れを聞いた。

夫は私の姉に連絡していた。通っていた産婦人科からそのまま転院してきたため、入院準備を何も持ってきていなかった。夫は私を1人にしないように付き添ってくれ、入院に必要なものを姉が持ってきてくれた。もともと家族に弱みを見せられない私は姉が来ると気丈に振る舞った。「どうしてこんなことになったの…」と姉は言ったがそんなこと私が一番思っている。姉とは普段からとても仲良くしているけれどこの時ばかりは気丈に振る舞うのがしんどかった。荷物を持ってきてくれたし心配してくれているのにすごく最低だけど、早く帰ってほしいと思ってしまった。姉は元々すごく空気を読む方なので、私が言わずともその後すぐに帰って行った。

受診から入院、検査までバタバタ進んでいき、気が付けば23時を回っていた。晩御飯を食べていなかったので、コンビニで姉に買ってきてもらったおにぎりやサンドウィッチを机に広げた。食欲がわかない。

夫が隣で「俺がしっかりしないとな」と独り言のように言った。

そのあと「明日体力がいっぱいいると思うからしっかり食べてね!」と私に食べることを促した。私は無理矢理おにぎりを食べた。

この日は病室のベッドで夫と長男と3人で眠った。

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一番下に手書きで ”胎児死亡” と書かれている

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