死産~私のお腹の中で確かに生きた息子の記録⑪

死産~私のお腹の中で確かに生きた息子の記録⑪
入院②二日目・助産師さん

入院2日目。外が明るくなって少し安心した頃、夫が一旦帰宅した。夫はお産に立ち会うため、今日の長男のお世話を昨日姉が来た時にお願いしていた。自宅に姉が来て長男を見てくれる段取りだったので引き渡しに帰ったのだ。

夫と長男が病室を出た瞬間、我慢していたものが一気に爆発した。何度かこぼしては必死に止めていた涙が止まらなくなり、声を上げるほど大泣きしてしまった。1人になってもまだ泣いてはいけないと思っていた私は、また涙を止めようとするけど今度はどうしても止まらない。1人で泣いていると、担当して下さる助産師さんが入ってきた。泣き止まないといけないと思い、タオルで涙を拭いて顔を上げると

「つらかったね。ずっと我慢してたね。」

と言って背中をさすってくれた。

もう涙は止まらなかった。

入院手続きのときから涙を見せずにいた私の様子が引き継がれていて、心配してくれていた助産師さんはやっと泣いたという感じだったそう。

「子どもに泣いているところを見せたくなかった。夫にも心配をかけたくない」

と話しながら泣く私に助産師さんは落ち着いたトーンでこう言った。

「赤ちゃんが亡くなってしまって辛くないお母さんはいないよ。それだけ大事な存在をなくしてしまったんだから。赤ちゃんを大切に思っている証拠だから、赤ちゃんのために泣いてあげよう。」

ストンと私の心に落ちた。この涙は自分のための涙じゃなくて赤ちゃんのために流す涙なんだ…どれだけ大事だったかの証拠なんだと…。

それからしばらく号泣した私にずっと付き添ってくれた助産師さん。背中をさすり、泣く時間を与えてくれた。決して急かさず落ち着くのをひたすら待ってくれた。思いっきり泣いたことで少し気持ちが落ち着いた。

ここで“泣いていい”と思えないままこの先をずっと進んで行くことになっていたら、私の心はきっと潰れていっただろうと振り返ってみて思う。つらい思いを押し殺して気持ちの行き場を無くしてしまったらどんどんどんどん心に溜まっていく。それが限界を迎える頃には心は死んでいただろうと思う。

この助産師さんとの出会いが、私が前を向こうと思えるようになった出来事の大きな一つだった。

ただそう思えたのはもう少し先のことで、この時は悲しみのどん底でまだまだ現実を受け入れられない状況だったのである。

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