
入院③処置
「赤ちゃんが亡くなってしまっている以上赤ちゃんへの影響というものはないけれど、赤ちゃんから母体に悪影響を及ぼす危険があるので早く外へ出してあげないといけない」と昨日の説明ではそのように聞いた。外へ出す方法については通常の出産と同じで経腟分娩になるそう。てっきり帝王切開かと思っていたけれど、お腹を切るとなると母体に負担がかかるのだという。ただ当然のことながら赤ちゃんからのアクションはないので陣痛促進剤などを使う誘発分娩になる。
陣痛の痛みは一度経験しているし、よく覚えている。個人差はあるけれど相当痛いし苦しいし辛い。命がけ。それでも耐えられるのは愛しい我が子に会えるから。そして赤ちゃんも命がけで産道を通ってくる。赤ちゃんも頑張っているんだと思って頑張れる。今度はいくら頑張って耐えても産声を聞くことはできない。絶対に…。
分かっていながらあの痛みを今からもう一度経験する。こんな悲しくてつらいお産はそうそうないと思う。苦しさや痛みは伴ってもだいたいは幸せなもの。なのに私は頑張れるのだろうか…。
そんな思いでいっぱいだったがそれでも私には目標があった。
助産師さんがこんな風に言っていた。
「次男君はお腹の中で亡くなってしまっているから元気に産まれてくる赤ちゃんとは違って、お母さんの産道を通ってくるときに傷つきやすいの。でもできるだけきれいな状態で出してあげたいと思うから、しっかりいきみ逃し頑張ろうね。」
私が母親として次男にしてあげれられることはもうこれしかないと思った。一つでもしてあげられることが残っていたことに嬉しさも感じた。
ただ一言にいきみ逃しと言っても簡単なことではない。何ならお産中一番つらい時間帯がいきみ逃しの時間だと言っても過言ではないと思う。通常は子宮口が全開になるまでいきんではいけない。全開になる前にいきんでしまうと裂けてしまったり子宮口がむくんで開きにくくなりお産が進みにくくなってしまう可能性があるらしい。全開とは10㎝で、すんなり開いていく人もいればなかなか開かない人もいる。もちろん個人差はあるが7~8㎝程子宮口が開くといきみたくなってくる。10㎝に至り、赤ちゃんの向きなどの条件もよければ初めていきんで良いという許可が出る。私はいきみたいのにいきんではいけないこの時間がとても苦しいと長男の出産で感じた。
けれど、次男の為に頑張ろうと決意した。傷つけずに産んであげたい。
入院2日目、朝10時頃。夫が病院に戻ってきたタイミングで処置が始まった。なるべく自然にお産を進められるようにと、促進剤を使う前にバルーンを入れることになった。子宮口にゴムの袋を入れて水を注入し、風船のように膨らませて子宮頚管を押し広げる。そうすると子宮口が開きやすくなるというもの。袋に水を入れるとすぐにお腹が痛くなった。重い生理痛のような痛さで陣痛の始まりだった。こんなすぐに効果があるのかと驚いた。出産自体も2人目になるので、早く進んでいきそうだなと思った。
個室に戻って様子をみることになった。陣痛の間隔は2分間隔だったが自分の痛みの感じ方としては5分間隔のときぐらいの陣痛初期の痛さのようだった。