
突然の宣告
産婦人科の先生からの指示はきちんと守り、夫の協力も得て安静に過ごしていた。相変わらず張りも治まらないし胎動も少ない。毎日不安しかない。
31週4日。前回受診してから3日後。お腹が硬い。胎動が少ないというかとうとう動いてない気すらしてきた。その日の夜、夫も長男もとっくに眠っている横で私はひとり泣きそうになっていた。お腹をとんとんとたたいてみた。とんっ とかすかにお腹の中から一回返ってきた。かすかだったけれどちゃんと生きていると久しぶりに感じられた気がしてすごく嬉しかった。少し安心して眠りについた。
この胎動が私が感じた最後の胎動だった。
次の日、1日を通して全く胎動がなく、何度お腹をとんとんしても返ってこなかった。夜ベッドに入ってからの時間に比較的動いていたため、夜まで様子を見たがやっぱり動かない。少し前に受診して大丈夫と言われたけれど気になって仕方ない。何なら毎日確認しないと不安な状態。「明日病院に行きたい」と夫に伝えた。次の日夫に付き添ってもらって受診した。
31週6日。いつものように待合室で待つ。いつも診察前に体重測定や血圧測定、看護師さんによる簡単な問診がある。「張りがひどくて胎動が全然感じられないんです」と伝えると「張ってるとなかなか胎動が分かりにくくなりますからね…」と言われた。「そういうことじゃない」と思ったけど、自分で先生に伝えようと思った。
順番が来て診察室に入ると、先生に胎動がないことを改めて伝えた。すぐにエコーで診てもらった。私は安心したかった。だから受診した。半信半疑にしか受け取れなくても先生の「大丈夫」が聞きたかった。
先生の第一声は
「動いてないね…」
だった。
一瞬のうちに嫌な予感が頭をよぎったがそのまた一瞬あとに信じたくない一心から“身体が動いていないだけだ”とか“一時的に動いていないだけだ”とか“動いてない”というその一言をそんな風に思い込もうとしていた。けれど確かめないといけなかった。気持ちとは裏腹に口は勝手に動いていた。
「心臓が動いていないということですか…?」
「うん…」
「え……」
これ以上言葉が出なかった。人間の思考が停止するときはきっと防衛本能なのだと思う。ショックから自分を守るための…。
夫の顔も見れなかった。顔を見てしまうと現実なのだと知らされる気がした。