
日常的に使う言葉ではないものの、とてもナイーブな話題のために使い方を間違えづらい言葉である「流産」と「死産」。妊娠したのに胎児が亡くなったこと指すワードですが、その二つには共通点もあれば違いもあります。また、対応や手続きも変わってきます。
この記事では、死産の経験がある元保育士、3人の母でもある私が、「死産」と「流産」の違いについてお話しします。
※便宜上の区分けについて説明しますが、親の心情は簡単に区分けできません。ぜひ、最後までお読みいただけたらと思います。
記事を読んでいただくと、残念ながらも実際に「死産」「流産」を経験した方との会話で正しい表現を使え、気持ちの共有がより深まると思います。
結論から申し上げますと、死産と流産はその事象が発生した週数で変わってきます。そして、さらに医学上と法律上の定義が異なっている言葉です。
医学と法律で異なる定義
実はこの「死産」については医学(日本産科婦人科学会)と国(法律)では定義が変わります。まずはそれぞれの定義についてご紹介します。
医学的な定義
医学的定義は妊娠22週以降の死児の出産を「死産」としており、後述しますが21週6日以内を流産としています。
死児とは、出産後に心臓拍動、随意筋の運動、呼吸のいずれも認められない状態のことです。
22週を区切りにしている理由は、医学的な観点から、妊娠22週以降に生きている状態で胎児を出産した場合なら、未熟児医療で命を救える可能性があるためです。
また、流産と区別することで、母親のケアやサポートの基準を決定する際のガイドラインにもなっています。
私の感覚ですが、知人との会話で「死産」が出てきたときは、この医学的観点の「死産」の場合が多かったです。
法律上の定義
一方で、法律上の定義は妊娠12週以降に死児を出産することとしています。
実際に12週以降に死児を出産した場合は、死産に関する届出や手続きなどの法的な対応が規定されています。
厳密には昭和21年厚生省令第42号により定められており、戸籍法にも死産届の届出が義務付けられています。
死産に関する手続きについてはこちら
目的の違いと共通点
医学と法律の「死産」の定義の違いは、その目的が違うためとも言えます。医療提供者は、死産と流産を区別することで、処置の内容や、その後のケアとサポートを決定するためのガイドラインの役割を果たしています。一方で法律実務者が使用する死産は、届出や手続き、そして助成を行う基準のためともいえます。
どちらの定義も「死産」の対応のために重要ですし、社会的、倫理的責任を果たすための基準として機能し、それぞれのデータを元に死産に関する理解とサポートの向上を目指しているでしょう。
流産とは
前述したように医学的な定義として、妊娠22週未満に死児を出産した場合に「流産」とされます。また、法律上(母体保護法)にも「流産」という言葉は定義されていませんが、サポートを行うために、法的文書や指針で医学的な定義と同様に指す場合が多いです。
そして、流産にも「初期流産」と「後期流産」と分けられます。
初期流産とは
初期流産は妊娠の最初の12週未満(妊娠初期)に起こる流産を指します。
その多くは、染色体異常が原因であり、これは自然的な現象と考えられることが多いです。他にも、ホルモンの問題、子宮の異常、重度の感染症、生活習慣(喫煙、過度のアルコール摂取、違法薬物使用)などが原因となると言われております。
流産の大半は初期流産であり、統計では妊娠の約13%前後がこの期間に流産で終わるとされています。
後期流産とは
後期流産は妊娠12週目から22週未満までに起こる流産を指します。
後期流産の原因には、子宮や胎盤の異常などがありますが、後期流産の原因は初期流産よりも多様で、しばしば複数の要因が絡み合っています。
後期流産は初期流産よりもはるかに少ないですが、妊娠の約2%が後期流産になっています。
共通点と違い
どちらの流産も、胎児が生存可能といわれる22週な妊娠週数に達する前に起こります。そして、流産の多くは避けられない原因によるもので、治療や予防が難しいことがあります。
どちらも同じく悲しい流産ではありますが、原因や治療、母体への影響においても違いがあり、適切なケアやサポートが求められます。
まとめ
「死産」と「流産」について、医学的な定義や法律上の区分けについては、下記の表にまとめました。
項目\週数 | 0~ | 12~ | 22~ |
---|---|---|---|
医学上 | 初期流産 | 後期流産 | 死産 |
法律上 | – | 死産 | 死産 |
死産届 火葬 | 不要 | 必要 | 必要 |
その他 | 全妊娠の約13%が初期流産になっている | 法律と医学で異なる定義になっている | 母体娩出時に生存していたら、未熟児医療で命を救える可能性がでてくる |
最後に
便宜上、流産と死産は線引きされていますし、母体の負担や対応など変わってきます。しかしながら、周囲にどう定義づけられようが、親としての悲しみは他人に線引きされるものではありません。
正しく言葉の意味を理解しつつ、そのベースには悲しみがあることをぜひ知っていただきたいと思います。
また、実際に妊娠9ヶ月で死産を経験した私が感じた、これらの言葉の使い方ついては別記事で伝えさせていただきます。(少しきつい表現があるかもしれません)